高校卒業資格試験 その1
Esame di maturità
この試験はバカロレア試験に相当するものらしいが、正式名称は
Esame di Stato conclusivo del corso di studio di istruzione secondaria superiore
つまり、高校修了国家試験ということになる。この試験に合格していないと(合格点=60%)大学にも入れないし、各種国家試験も受けられない。高校卒業資格がないと言うことになる。実際イタリアの高校では留年も珍しくなく、稀にこの卒業試験で合格点が取れず最終学年をやり直す生徒もいる。
それにしてもこのテストの形式、日本の入試とは全く違って把握しきれない。直訳すると「成熟度試験」。人間として学力的に成熟したかどうか(?)を試す試験だけあって、なかなか奥が深いのか、大変わかりづらい。
おまけにこの試験は数年ごとに少しずつやり方が変わったりするため、高校生たち及び高校教師らを困らせている。「今年の試験はこんなところが違う!」と毎年ニュースになっている。2023年にこの試験が生まれてから100年経ったと言うことでこんな記事があったので、興味のある方はご一読を
Il Sole 24 ore (2023年6月20日) (イタリア語)
簡単に言うと、試験は次のように3つに分かれている
- 第一次試験 筆記 イタリア語(または履修言語)で小論文
- 第二次試験 筆記 他の教科(毎年ランダムに教科が決まる)
- 口頭 原則的に履修教科全般にわたる
まずは、第一次試験についてまとめてみた。
第一次の筆記試験は、6月の半ばに行われる。2024年の文部科学省のサイトに発表されている。2024年は6月19日に行われる。イタリアの学校は概ね6月の第1週に終わり夏休みに入るので、受験する高校生はそれ以降も相当真剣に試験勉強に励む。一発勝負なのでその真剣さは並大抵のものではない。
全国高校共通の論文問題となるのだが、7つ与えられたテーマの中から一つ選んでなんと6時間ぶっつづけ(!)の試験時間が与えられる。(添削も大変だろうな。)そのテーマも文部省サイトで公表される。
過去問はここで全て見ることができる。(https://www.istruzione.it/esame_di_stato/202223/Licei.htm)
小論文、と言ったが、3つのカテゴリーに分かれている。
2023年の例を見てみる(https://www.istruzione.it/esame_di_stato/202223/Italiano/Ordinaria/P000_ORD23.pdf)
- A-1, A-2:詩や文学作品の一部を読んでそれを分析する
- B-1, B-2:論述文の分析をして、さらにそのテーマに準じた論述を書く
- C-1, C-2:時事問題についての説明、論証、批判的考察
この6枚の紙が生徒一人一人に配布され、試験開始と同時に読み始める。上記のカテゴリーの中から一つだけ選ぶのだが、自分はどの分野を選ぶか、というのは大体試験対策として決めておくようだ。当日は全てのテーマの中からどれを選ぼう、と目移りしている場合ではない。文学全般が苦手なら、時事問題に絞る、などと対策を練る。
試験は全国一斉にAM08:30にはじまり、午後02:30までぶっ続けだ。間食などは持ち込み可だが、カバンから出したりしてはいけないので、あらかじめ机の上に出しておくということだ。
6時間の試験時間の中で、3時間を過ぎた時点でトイレなど、試験管の許可をもらっていくことができるが、昼食休憩などはもちろんない。早く描き終わったとしても始まりから3時間以内に教室を出てはいけない、という規則もある。
第一次試験の翌日にすぐ第二次試験。同じく全国一斉に朝8時半から行われる。第二次試験は最低6時間、芸術高校デザイン部門は18時間(6時間ずつ3日間)にわたって行うなど、高校の専門性によって出される科目も問題も試験にかかる時間も違ってくる。
2024年の試験科目が1月29日に発表されたが、理系高校(Liceo Scientifico)は数学、文系高校(Licero Classico)はラテン語、語学高校は外国語と外国文化という感じだった。去年はこうだったから、今年はこうかもとヤマをはるサイトもある。この試験も6時間の試験時間なので、そう簡単に解ける問題ではない。全て小論文形式で、翻訳、読解、分析などを行う。問題数はたとえば10問から5問選ぶなど、という感じで少ない問題数ということから見ても、回答するのがどれだけ大変なのかは想像がつくだろう。上記の文部科学省のリンクで今年のテーマを見ることが可能だ。
そして、筆記試験が終わった後はすこし、ひとやすみ(といっても一休みしている学生はいないだろうが)。
試験官は、公平度を保つために自校他校の教師がミックスされたりされなかったり(これも年によって変わる)するが、その名前も文部省のサイトで発表される。他校から来る試験官がどんな教師なのかを、学生同士で情報交換したりするという徹底ぶり。もちろん、そういう情報交換をするためにソーシャルネットワークも大活用だ。
口頭試験については、見学の体験も含めまた別に書き記そうと思う。
コメント
コメントを投稿