個人面談(会話)の導入

当日本語教室は2020年3月よりほぼ完全オンライン化となりました。経緯は、Twitterでもご覧になれます。

面談(個人会話)の導入

私の日本語教室は10月から5月までなのですが、2020年3月(ロックダウン)から5月まで約3ヶ月間のぶっつけ本番みたいなオンラインレッスンを終えて、次の年度のオンライン授業を考え直し、個人面談を取り入れることにしました。いちばんの理由はオンラインで雑談を含めた学習者とのやりとり、会話(日本語/イタリア語)が少なくなって「繋がり」が感じられないことに、双方(教師側と生徒側)が少し違和感/フラストレーションを感じていたからだと思います。当時は対面のクラスがいきなり全面オンラインになったので、なおさら強く感じられました。

フェーズ1

年度が変わり、授業携帯を見直す際に、授業時間は雑談や小テストをなくし一回のレッスンを90分から60分に縮小し、そのかわりに月に一回20分程度の個人面談ならぬ、会話レッスンをこちらが提示する時間の中で予約してもらうことにしました。実際には個人ではなく教師1人対生徒2人の3人会話でした。

(イタリアは個人の教室が対面で授業を行える状況になるまでに相当時間がかかりましたので、最初の頃は面談もすべてオンラインでした。)最初は、それまでも使ったことがあるDoodleで、こちらが提示する時間帯の中から3つほど各生徒に選んでもらい、それを見ながら同じレベルの生徒を2人組み合わせて私が「この日時でやりますがいいですか」と確認してやっていました。これが結構大変で、こんな感じでDoodleの表とにらめっこしてやっていました。

「個人面談」を「セミ個人面談」と称して生徒2人対先生1人の形式を取っていた理由は
  1. 新入生(レベル1=ゼロ初級)が他の仲間と少しでも「顔見知り」になるため
  2. 人数が多くてこなせる気がしなかったので、2人まとめてやることで時間を節約するため
  3. 他の学習者に質問したりその答えを聞くことで自分のレベルと比較してもらうため
    でした。もともと友達と一緒に受講していてその友達といっしょに面談を希望する場合はもちろん、それもOKです。

    フェーズ2

    自分自身の時間の都合+2人の生徒の時間調整に時間がかかり面倒でいろいろなアプリを試したりしましたが、それならいっそのこと1人ずつにしよう、とCalendlyを導入しました。Google AccountのGoogleカレンダーと連携することで、カレンダーにも予定が自動的に追加されます。万が一、時間を調整し直さなければいけない時も、キャンセルしてもう一度予約できる手軽さです。





    ただし、ゼロ初級のレベル1に限っては最初の3ヶ月(10月から12月)は生徒2人を組み合わせて少しばかりの交流を図るようにしました。

    フェーズ3

    しかしながら面談に割かれる時間というのが結構多くて自分自身余裕がなくなってきました。その頃、連絡をとっていた知り合いの日本語教師Aさんにオンラインで個人面談をやっていただけないか打診したところ引き受けていただきましたので、対面を希望する若干名を除き、その先生に面談を移行しました。スケジュール管理は私が担当し、Calendlyの予約が入ると、Aさんに確認を取り、その後、スカイプで時間を設定して、私の方にもアラームが入るようにしました。何度も会を進めるごとにAさんと学習者の面識も深まり、楽しみに面談を受けてくれる生徒もいます。そして、何より、私が面談をするとどうしても授業の内容と関連させた語彙や文法を使いがちなのですが、Aさんにはあえて詳しく授業内容は知らせず、テーマだけを話し合って決めるだけにしていますので、語彙や言い回しも増える結果となりました。Aさんへ渡す生徒の情報(名前、レベルのみ)は最小限にしてあまり先入観を持たずに対応してもらいました。

    フェーズ4

    2022年のオンライン新年会でお呼びした「おはなをにほんごで」教えていらっしゃる先生のレッスンを面談の代替案として導入することを思いつき、2022年2月から試してみました。
    というのも面談は月謝の中に入っている一つの活動なのですが、うまく話せる気がしない生徒はその予約をしないからです。
    (参照 教室のアンケート結果  https://bityl.co/CEnc)
    イタリア語がわからない先生に、日本語を学ぶのではなくお花を学ぶ、ということであれば、自分の分からなさを実感、一緒に参加しているレベルが上の生徒を見て勉強意欲がアップ、レベルが上の生徒はレベルの下の生徒をフォローするので実質的には教師は助けなくてもいい、というのが私が思い描いた状況でした。
    実際には、お花の先生とのすりあわせも必要で、失敗もいろいろありましたが、気に入って何度も受講してくれる学習者も現れました。にほんごを学ぶのではなく、日本語を通じてほかのものを学ぶ、というのはいい刺激になると思います。

    面談の詳細

    個人面談、会話、といってもテーマがないとすすめにくく、また学習者の進歩状況の比較もしづらいので、Aさんと毎月テーマを決めています。内容が外れても構わないことになっています。そして私1人でやっていた方法でもある文字起こしをやってもらっています。面談では、文法の間違いなどを指摘したり説明することはしない前提ですが、放置はしたくないので文字起こしする時に訂正する方法です。私自身タッチタイピングできるので生徒と会話しながらタイピングして、生徒の言い間違いを訂正したりわからなかった言葉を注釈つけたり(キーボードショートカットで取り消し線や太文字の機能を使うと楽です)しながら文字起こしします。Aさんに頼む時もそれを条件としました。そしてその文書はあとから生徒と共有します。

    現在の状況と課題
    オンラインになってからあまり深い考えもなく取り入れた個人面談形式ですが、おそらく対面形式でもとても有効な方法だと思っています。それは
    1. いつも話す人は決まっていて、内気な人は言葉少ない。
    2. 授業の中の決まった形式でのフレーズ以外の練習になる。
    3. 授業と関係のない話題で、生徒の違う面(興味、趣味など)を発見しそれを授業に生かすこともできる。
    4. 他の生徒の前では発言しづらい人も1対1だと発言しやすい。
    5. 自分が話したいことを話すと言う満足感がある。
    6. 話している時の間違いなどで理解度が分かり、授業に活かせる。などなど

    現在定着しつつある形をまとめると、

    • 1対1面談を月いち、20分
    • ただしゼロ初級の始めの3ヶ月は生徒2人1組
    • 会話中心で文法の間違いは指摘しない(確認の言い直しはあり)
    • テーマを決めておく(内容が少し似ることで生徒同士の比較ができる)
    • 書き起こし内容(プラス訂正箇所)は、生徒と共有
    • 面談は授業とは別の先生が行い新鮮味を持たせる
    • 会話の予約はCalendlyでオンラインと対面から選択
    • 会話の代わりに「にほんごでおはなレッスン」(グループレッスン60分)を選択可能

    課題

    • こうして久しぶりに見直して、最初の頃の生徒二人組で日本語でいろいろ質問し合うというのも相手を知る、というか交流にはよさそうだな、と考え直しました。ちょっと面倒ですが、たまには2対1スタイルも復活させるのもいいかも。
    • 現在、会話の内容をAさんと共有をしていますが、生徒の許可を取り録画も共有して生徒だけでなくAさんの会話レッスンのスキルも見直していきたい。
    • おはなのレッスン以外も企画したい
    • 話すことに気後れして予約しない学習者への対応(無理強いはしたくないが挑戦はしてもらいたい)
    • ほかの会話レッスンの先生も導入できるか
    • 間接法で授業が進められるので、会話ではできるだけイタリア語は混ぜない(当たり前ですが、学習者側から意識することも必要)
    • 質問に答えることはできるようになっても、そこから会話に膨らませていくのが難しい(コミュニケーション力)

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